.条文
改正民法
第千十四条
(・・・)
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
第八百九十九条の二
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
(・・・)
2.従来の判例
最判平成11年12月16日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57035
(本件の)遺言は、特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨のものであり、右相続人らは、被相続人の死亡の時に遺言に指定された持分割合により本件各土地の所有権を取得したものというべきである。そして、この場合には、当該相続人は、自らその旨の所有権移転登記手続をすることができ、仮に右遺言の内容に反する登記がされたとしても、自ら所有権に基づく妨害排除請求としてその抹消を求める訴えを提起することができるから、当該不動産について遺言執行の余地はなく、遺言執行者は、遺言の執行として相続人への所有権移転登記手続をする権利又は義務を有するものではない。
3. 改正による変更
(1)
899条の2により、特定財産承継遺言による所有権承継について、
そのため、特定財産承継遺言においても、速やかに対抗要件(登記)を具備する必要が高まった。
そこで、1014条2項により、当該遺言における遺言執行者の権限が規定された。
4.登記手続き
特定財産承継遺言により相続人Aが不動産αを承継した場合。
また当該遺言では、遺言執行者としてBが指定されている。
(1)遺言執行者Bによる登記申請
1014条2項により遺言執行者が単独で、相続登記の申請を行うことができる。
(2)相続人Aによる登記申請
相続人Aによる登記申請も、遺言執行者の遺言執行を妨害する行為には当たらないから、認められる。従来通り、相続人Aによる単独での相続登記申請が可能。
5.登記申請時の本人確認・意思確認について
(1)相続人Aによる登記申請
Aへの確認で問題なかろう。
(2)遺言執行者Bによる登記申請(!要確認!)
Bへの確認はもちろんのこと、登記名義人となるAへの確認は不要か?
他の相続人が存在する法定相続登記の単独申請と同じか?
(Aへの登記識別情報を、Bに対して交付することになるが。)
第千十二条
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
(・・・)
従前の「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」旨の表現は削除された。