司法書士法人 貝原事務所(沼津市の司法書士)

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預金保険制度と成年後見業務

成年後見業務において、成年被後見人等の預金口座を管理する際に、「ペイオフ」への留意が必要といわれます。

改めて、ペイオフあるいは預金保険制度についておさらいをし、果たしてどのような行為が「ペイオフ」対策たりうるのか確認します。

 

1.預金保険制度とは

預金保険制度とは、「万が一金融機関が破綻した場合に、預金者等の保護や資金決済の履行の確保を図ることによって、信用秩序を維持することを目的」とした制度(金融庁HPより)。

制度内容は、預金保険法(昭和四十六年四月一日法律第三十四号)により定められている。

預金保険法(昭和四十六年四月一日法律第三十四号)

第一条  この法律は、預金者等の保護及び破綻金融機関に係る資金決済の確保を図るため、金融機関が預金等の払戻しを停止した場合に必要な保険金等の支払と預金等債権の買取りを行うほか、(・・・)金融機関の破綻の処理に関する措置、特定回収困難債権の買取りの措置、金融危機への対応の措置並びに金融機関等の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置等の制度を確立し、もつて信用秩序の維持に資することを目的とする。

 下線部が、ペイオフに関連する事項となる。なお預金保険制度の実施者たる預金保険機構は、プールした保険料を利用して救済合併における資金援助を行うことも認められている(同法第四節参照。)。

 

2.預金保険制度の概要

「保険」制度であるため、「保険料の徴収」と「保険事故が発生した場合に保険金を支払う」ということが基本構造になる。

(0)保険契約の発生

第四十九条  (・・・)金融機関が預金等に係る債務を負うことにより、各預金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該預金等の払戻しにつき、機構と当該金融機関及び預金者等との間に保険関係が成立するものとする。

「預金等」や「各預金者等」など、「等」が気になるが、とりあえずの理解としては「等」を抜かして読めばよいと思う(定義は第二条2項参照。)。

(1)保険料の徴収

第五十条  金融機関は、事業年度ごとに、当該事業年度の開始後三月以内に、機構に対し、内閣府令・財務省令で定める書類を提出して、保険料を納付しなければならない。(・・・)。

(2)保険事故の定義

第四十九条  金融機関がその業務を営み又は事業を行うときは、当該金融機関が預金等に係る債務を負うことにより、各預金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該預金等の払戻しにつき、機構と当該金融機関及び預金者等との間に保険関係が成立するものとする。

2  前項の保険関係においては、預金等に係る債権の額を保険金額とし、次に掲げるものを保険事故とする。

一  金融機関の預金等の払戻しの停止(以下「第一種保険事故」という。)

二  金融機関の営業免許の取消し(信用金庫若しくは信用金庫連合会又は労働金庫若しくは労働金庫連合会にあつては事業免許の取消しとし、信用協同組合又は信用協同組合連合会にあつては解散の命令。第五十五条第二項第一号において同じ。)、破産手続開始の決定又は解散の決議(以下「第二種保険事故」という。)

 (3)保険金の支払い

第五十三条  機構は、保険事故が発生したときは、当該保険事故に係る預金者等に対し、その請求に基づいて、保険金の支払をするものとする。(・・・)。

ちょっとわき道にそれますが、次の条文はおもしろい。

第五十三条

3  保険金の支払は、機構が、保険事故に係る各預金者等ごとに当該保険事故に係る保険金に相当する金額を金融機関に預金として預入し、当該預金に係る債権を当該保険事故に係る預金者等に対して譲渡する方法により行うことができる。

5  第一項又は前項の請求は、(・・・)公告した支払期間内でなければ、することができない。ただし、その支払期間内に請求しなかつたことにつき災害その他やむを得ない事情があると機構が認めるときは、この限りでない。

 

3.いわゆる「ペイオフ」について

(1)

ペイオフ」とは、一般的用法としては「破綻金融機関の預金等が、全額保護から定額保護に移行すること」とされる(wikipediaより)。要は「預金全額が保証されない状態になること」をいう。

他方で、法律上(あるいは制度上)はどうかというと、ペイオフという用語が使われているわけではないが、預金者への保険金の直接支払いがなされることを指すとされる。要は「預金保険機構による保険事故発生に伴う保険金の支払い」をいう。

具体的な保険金の額は、保険対象となる預金のなかでも、種類ごとに定められている。

・一般預金

・決済用預金

確定拠出年金に係る預金の特例

このうち、一般預金と決済用預金については、次のとおり定義づけられている。

第五十一条  預金等(決済用預金(次条第一項に規定する決済用預金をいう。次項において同じ。)以外の預金等に限るものとし、外貨預金その他政令で定める預金等を除く。以下「一般預金等」という。)に係る保険料の額は、・・・。

第五十一条の二  次に掲げる要件のすべてに該当する預金(外貨預金その他政令で定める預金を除く。以下「決済用預金」という。)に係る保険料の額は、・・・。

一  その契約又は取引慣行に基づき第六十九条の二第一項に規定する政令で定める取引に用いることができるものであること。

二  その預金者がその払戻しをいつでも請求することができるものであること。

三  利息が付されていないものであること。

 

(2)一般預金等に係る保険金の額

第五十四条  一般預金等((・・・)以下「支払対象一般預金等」という。)に係る保険金の額は、一の保険事故が発生した金融機関の各預金者等につき、その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する支払対象一般預金等に係る債権(・・・)のうち元本の額(・・・)及び利息等(・・・)の額の合算額(その合算額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)に相当する金額とする。

「なんだ全額保護されるのか」と思うが、次の条項が(一般的な意味での)ペイオフを意味している。

第五十四条

2  支払対象一般預金等に係る保険金の額は、前項の元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)が政令で定める金額(以下「保険基準額」という。)を超えるときは、保険基準額及び保険基準額に対応する元本に係る利息等の額を合算した額とする。(・・・)。 

政令は次のとおり。

預金保険法施行令(昭和四十六年四月一日政令第百十一号)

第六条の三  法第五十四条第二項 に規定する政令で定める金額は、千万円とする。 

すなわち、一預金者ごとに、元本1000万円+利息のみが実質的な保険対象となる(なお、外貨預金等はそもそも保険対象にならないことにも留意。)。

(3)決済用預金に係る保険金の額

第五十四条の二  決済用預金((・・・)以下「支払対象決済用預金」という。)に係る保険金の額は、一の保険事故が発生した金融機関の各預金者につき、その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する支払対象決済用預金に係る債権(・・・)のうち元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)に相当する金額とする。

こちらについては、一般預金のような「保険基準額」が定められていないため、全額が保険の対象となる。

 

以上から、預金者から見たときに、ある金融機関が破たんした場合、「決済用預金」は全額が、「一般預金」については元本1000万円+利息が保険金として支払われることが、条文上確認できた。

決済用預金とは、端的に言えば「利息の付かない預金」を指すわけで、この口座で現金を管理するデメリット(利息分の利益の逸失?)と預金保全上のメリットを比較して、決済用預金を利用するか、別の金融機関に一般預金口座を設けて元本1000万円以内に収めるかを検討することになるのですね。