司法書士法人 貝原事務所(沼津市の司法書士)

司法書士法人 貝原事務所(沼津市の司法書士)のブログです。業務に関連する話題はもちろん、それ以外の話題でも、関心を持った範囲で投稿してまいります。

本ブログに記載する情報(とくに法律・登記関係)の利用については、あくまで参考としてご活用ください。
弊所が情報の完全性を保証するものではありませんのでご留意ください。

 

FA制度

先日、今年ノーヒットノーランを達成した岩隈久志投手が、MLBロサンジェルスドジャースに入団することが発表されました(その後、メディカルチェックのプロセスで破談に。結果的に、マリナーズと再契約。)。MLBについては、FA対象の大物先発投手の移籍が早期に決着しており、その流れで岩隈投手も想定より早めの契約締結となったとのこと。

 

この時期は, MLBNPBにおいては,いわゆる「ストーブリーグ」にはいっています。

ストーブリーグとは,選球の契約更改・移籍などにより,次シーズンに向けて各チームが戦力を整えるべく(特に,移籍市場において)しのぎを削るものです。

NPBでは,いまでこそ移籍だったりトレードだったりが頻繁に見られるようになりましたが,MLBに比べれば,その頻度は圧倒的に少ないといえるでしょう。

 

 移籍市場といえば、欧州各国のプロサッカーリーグも面白いのですが、MLBNBAも近いものがあると思いますが)では,プレミアリーグなどと異なり,「移籍(FAやトレード)」と「ドラフト」が一体となって制度化されているために,各チームが一層戦略性をもって移籍市場に望むこととなるのです。

 

岩隈久志投手がFA(フリーエージェント)となっており,その動向が注目されていましたが,登場した言葉や動向を追っていくと,改めてMLBの移籍制度の面白さを実感しました。

 

というわけで,岩隈投手がFAとなって,ドジャースと契約するまでを整理してみました。FA制度を整理してみると,法律的にもおもしろいなぁと感じました。

 

1.2015年シーズン、冬の移籍市場で、マリナーズは岩隈投手を放出せず。
2015年シーズンが満了するとともに、岩隈投手はフリーエージェントNPBと異なり、選手側で行使が必要なFA権ではない。前所属球団の保留権が及ばない状態になることを指す。)となる予定でした。
そうなると所属球団のマリナーズとしてはFAを見越して、①岩隈投手をトレードに出して他球団から選手を獲得する、②トレードには出さずシーズン終了まで戦力として保持する、という大きく2つの選択肢がありました。特に①の選択肢は、プレーオフに向けて実績ある選手を揃えておきたい球団と、今シーズンのプレーオフは諦めて来期以降に向けて戦力を整えておきたい球団との間で合意が成立しやすく、たとえば今シーズンでいうと、デトロイト・タイガースからトロント・ブルージェイズに移籍したプライス投手などが挙げられます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B9

マリナーズとしては、プレーオフは厳しい状況だったので、選択肢①をとるのではないかと思いきや、結果としてはトレードは成立せず、シーズン満了まで岩隈投手はマリナーズに残ることとなりました。

2.岩隈投手、マリナーズからのクオリファイング・オファーを拒否。

シーズン終了後、岩隈投手はFAとなったわけですが、岩隈投手に対してマリナーズは「クオリファイング・オファー(QO)」を提示しました。QOについて、詳細はウィキペディアを参照頂きたいのですが、簡単に言うと、一定の契約条件を提示し、選手に対してその条件を受諾するか拒否するかの意思表示を求めるものです。

この一定の条件は、MLB全体の上位125選手の年俸の平均額による1年契約となっていて、1年契約ではあるけれど、それなりに高給である条件となります(今年は単年19億4300万円!!)。従って、その年俸に見合う価値があると球団が判断した選手に対してQOは提示されるのです。

とはいえ、単年度契約で有り、これまでQOを受諾する選手は限られていて、多くの選手は提示を拒否します。そして、そのFA選手がドラフト会議前に他球団と契約すると、契約した他球団はドラフト指名権を失い(但し、全体10位以内の指名権は保護される。)、前所属球団は1巡目指名終了後に行われる補完指名権を獲得するのです。

(ネット上のいくつかの記事を見ると、「獲得球団から流出球団にドラフト指名権が譲渡」となっていますが、ルール改正で本文のようなシステムに変わっていると思います。さらに変更があったとしたら、私の誤りです。英語ですが2015年ドラフトに関する記事を参照下さい。https://en.wikipedia.org/wiki/2015_Major_League_Baseball_draft

マリナーズとしては、仮に岩隈投手を失ってしまったとしても、代わりに今年のドラフトでの上位指名権(厳密に言うと1巡目指名ラウンドの後に行われる補償ラウンドにおける指名権)を獲得できるというわけです。他方、戦力補強として岩隈投手を獲得した球団は、代わりに今年のドラフトでの指名権を失い、将来の有望株を獲得できなくなる。これにより長期的には戦力均衡が保たれることになるのです。

3.岩隈投手、ロサンジェルスドジャースとの契約を発表

マリナーズからのQOを拒否した岩隈投手は、その後、ロサンジェルスドジャース(LAD)と契約しました。これによりマリナーズは補償ラウンドにおけるドラフト権を獲得し、ドジャースは1巡目指名権を失います。

但し、ドジャースは既にFAでザック・グレインキー投手をアリゾナ・ダイヤモンドバックスに獲られてしまっているため、この補償としてドラフト権を獲得しています。うまく出来ていますね。

ちなみにダイヤモンドバックスは、グレインキー投手の獲得により1巡目指名権を失っていますが、来年から2~3年を勝負の年としているのでしょうか。