司法書士法人 貝原事務所(沼津市の司法書士)

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斜線が引かれた遺言

今週月曜日のNHKニュースで,金曜日に遺言に関する最高裁判決が出されるとのニュースが。
どういった内容の判決であるのか寡聞にして知らず,楽しみにしていたのですが,裁判所のHPで紹介されました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/488/085488_hanrei.pdf

ネット上でも紹介されていました。

東京新聞:赤字斜線の遺言「無効」、最高裁 常識的な感覚重視:社会(TOKYO Web)

 

問題となったのは,文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が引かれた遺言書の効力についてです。
なお,この斜線が遺言者自身により故意に引かれたことが,事実として認定されています。

 

論点は次の条文の解釈について。

民法第九百六十八条2項
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

第千二十四条
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

 

968条は,自筆証書遺言の「訂正方法」について,厳格な様式の元で定めたものです。

一方,1024条は,遺言の撤回について定めたものですが,「破棄」が具体的にどのようなことを指すのかは明確ではありません。

 

原審はつぎのように判断していました。

「斜線が引かれた後も本件遺言書の元の文字が判読できる状態である以上,本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段により遺言を撤回したものとみなされる『故意に遺言書を破棄したとき』には該当しない」

 

最高裁は,この原審の判断を破棄して,つぎのように判断しました。

「本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は,その行為の有する一般的な意味に照らして,その遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから,その行為の効力について,一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。」
「本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段所定の『故意に遺言書を破棄したとき』に該当するというべきであり,これによりは本件遺言を撤回したものとみなされる」